春。はる。
春は自分を変えるのに一番いい季節だと心底から思う。
箪笥の中身をひっくり返して、いるもの、いらないもの、を分別していく。
シーズン中に着古したお気に入りだったTシャツ。
ふんわりとして、柔らかな肌触りのカーディガン。
どこに行くにも着て行っていたコートなり、季節のもの。
ありがとう、ありがとう、と思いながら丁寧にごみ袋に詰め込んでいく。
ついでに今年の春に着る分の服を取り出してみたけれど、すべて今よりずっと大きい。
試しに来てみたけれどウエストも肩もすべてぶかぶか。
彼氏のシャツ借りてみました!感があるけれど、今まで彼氏などいたことない。
痩せた。
1年でばかみたいに痩せた。
奥にしまい込んでたアルバムを取りだしてページをめくる。
今よりずっと不格好な自分が満面の笑みでピースサインを浮かべている。
今ではもう出せない、素敵な笑顔だった。
可愛さや美しさなら、おしゃれや美容に目覚めた今の方がいいけれど、
笑顔はこのころの方がずっと素晴らしい。
性格はどうだろう、今の方が明るくていいかもしれない。
けれども、昔の方が空気は読めていたのかもしれない。
痩せてから、見た目が変わってから世界が変わった。
季節が変わっていくように少しずつ変わっていった。
白いキャンパスに色が順番に彩られていくように、変わっていった。
そんな世界を与えてくれたのはまぎれもなく、金田さんだった。
私に素敵な魔法をかけてくれたのは金田さんだった。
ありがとう、金田さん。
好きだよ。好きだったよ。