夢女日記

今日も元気に夢見てる

真夜中のシンデレラ

気が付いた時には、そこは一面真っ暗闇の世界で、あたかもそれは随分昔にみた世界のようだった。
しかし、よく見てみればそこには生生しい暖かさや温度があり、夢ではないことを告げているような気がしたけれど、私にとってはこれが夢なのか現実なのか実際のところよくわかってなどいなかった。一度、呼吸をしてみたけれど、口に入ってくるのは湿った空気だった。ここはどこで、現実なのか夢なのか。わからないけれど、どうにか私はここに存在していた。




少し前のことを思い出してみるけれど、記憶がおぼろげで何も浮かんではこない。
確か金田さんにライブがあると言われたけれど。それが東京で、私は試験を控えていて。
ああ、そうか。結局ライブに行くことを選んだのか。
チケットはコンビニ決済にして受け取って当日の朝にそのまま向かった。
別に彼氏でもなんでもない人のために。
お願いされたわけでもないけれど。




幸いなことに前の方に行くことができて、そのまま人に押しつぶされて手を振ってみたり色々とすることだろう。
金田さんは奥にいるから私のことなどどうせ見えていない。
目が合ったところで、私だと気が付かない。
それに、その視線はきっと、自分と私とは当然、かかわりあえない大きな壁が存在しているのだと、そう主張する視線だ。
生きる世界が違う、そういった表現が正しい。




ああ、どうして私はこんな人が好きなのだろう。
どうして好きなのだろう。
好きになんかなりたくなかった。
そんな思いがあふれ出てくるしい。




幕はまだ閉ざされたままで、開演時間はあともう少しだ。
彼は、彼にとって私は何だろう。
私にとって彼は夢であり、憧れであり、ただの恋だった。





照明は落とされて、黄色い歓声が響き渡る。舞台装置が鳴り響いてそして黒幕は開かれて、金田さんの音が鳴り響いた。
そのきらびやかな姿は、初めて出会った日と何も変わらずに、まるで夢のように不確かな形をとってそこに存在していた。
一斉に後ろから人があふれ出て、もみくちゃになって、叫んで。
まるであの日のようだ。




金田さんは少しだけ笑っていて、すぐに視線を楽器に落とした。
それもあの日と同じだった。




仕草や癖や、情景は同じなのに、ここに存在している意味はずっと異なる。
ただの憧れは愛に変わって、恋はいつしか憎悪に変わった。




金田さん、私をそばに置いているのは、罪の滅ぼしのためですか?


画像:ぱくたそ
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