夢女日記

今日も元気に夢見てる

くらやみからぽこぱんぽこぱん

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まってくれ。とにかく待ってくれ。おちついてくれ。
と本人に言いたいのだが、生憎様私は先ほど起きたばかりであり、そもそも昨日は携帯の充電を忘れてしまった。
パソコンの方はつけっぱなしで寝た。
ライン通知はご丁寧に、メッセージが来るとアプリが起動する設定にしておいた。
だから、読んだらすぐに既読が付く。




先ほど私は起きたばかりであり、携帯は電池切れ。パソコンには既読のメッセージ。
おそるおそる携帯を充電器にさして、電源をつけると案の定山のように電話が来ていた。




「ふええ」




こんな泣き声、漫画やネットの世界だけで発せられるものだと思っていたのに、つい口から出たのはその言葉だった。
金田さんからの着信がめっちゃ来てる。深夜の時間帯から割と先ほどまでめっちゃ来てる。
ラインメッセージも遡れないほどメッセージ来てる。
あれ、なに?既読無視?なに?見て笑ってるの?等の言葉が山のように来ている。
よくよく見ていればだいたい言葉はかぶっていない。
語彙力すごいな…と感心していたが、そういうことではない。
私は、一体彼に何をしたというのだろうか。



 
 おはようございます。金田さん。
 昨日から今朝にかけて、メッセージがたくさんありますが、




何か御用ですか、と打つ前にすぐに既読になる。ひえ、リアルでこんな声が出てしまった。
そしてメッセージがとてつもなく早い。
鬼のように早い。?読む間に次のメッセ―ジが来て読めない。




「ひえっ」




連絡はつながったものの、やはり既読が付くだけで私からの返答がないことにしびれを切らしたのか、ラインの無料電話が作動する。
ぽこぴんぽこぴん♪とかろやかな音楽が響いて、ほぼ反射的にアプリを作動させた。




「……今まで寝てたの?」
「へ、へい」
「誰と?」
「え、一人で」
「証拠は?」
「え」
「証拠」




なんだなんだいきなり。どうしたというのだ。金田さんの声は静かに怒っているような感じだし、いきなり証拠と言われても困る。
あたふたとしていると電話が切られ、またしても電話がかかる。今度は携帯の方に。無料電話通信の方だった。



「ひ、は、い」
「……携帯画面を外に向けて歩き回って」
「は、はい」



起きたばかりだから髪の毛も顔もぐちゃぐちゃだし、パジャマはよれよれだし。
一方で金田さんは何やら着込んでいたけれど、顔めちゃくちゃ怖いし。
なんだよ。どうしたんだ。わけがわからない。
言われるままに歩き回る。当然、一人暮らしのわけだから誰かがいるわけでない。
むしろ、金田さんの私物を片づけたのだから部屋は少しきれいだ。




「うん。一人みたいだね」
「最初から言ってるやないですか」
「……そっか、うん」
「え、いきなりどうしたんですか」
「あ、そうそう。よだれのあとついてるよ」




ぶっつんと電話が切られた。最後の最後に余計な一言を言いやがって。
一体何が、私の行動の何が彼を怒らせたのだというのだ。
胸に黒い靄を抱えながら、ひとまず顔を洗いに洗面所へ向かうのだった。