日曜日の昼下がり
金田さんは私の憧れで私の夢そのもので、私が心から愛する人だ。柔和な顔つきで、物腰が低く、言葉遣いも丁寧だけど、彼が時折見せる闇は言葉でいい表せられないほど深く、決して誰にも触れさせはしない。
金田さんは私の部屋でよく眠る。時間なんか御構い無しに部屋に訪れては泥のように眠る。合鍵は渡した覚えがないのに、金田さんは私の部屋の鍵を持っていて、いつの間にか部屋にいる。
犯罪だ、とは思うけれど。
惚れているのだから仕方がない。
「あれ、おかえり」
「金田さん、2日ぶりですね」
「うん、疲れたよ」
8畳の部屋の、端っこのベッドにもたれかかっている金田さんは相当疲れているらしい。何か私が話しかけても曖昧な返事を繰り返すだけだ。脱衣所にこもって、荷物を整理して部屋着に着替えて戻ると金田さんは眠ってしまったみたいだった。
もう随分と見慣れているけれど近づいてその顔をまじまじと見つめる。
私よりずっと年上のくせに寝顔はあどけなくて、けれども目の下に濃く刻まれたくまや細やかな皺が微かに本来の年齢を感じさせる。
これからの皺の深さや数を一緒に刻み込めたらどれだけ素敵なことだろうか。
「ダメだよ」
頬を撫でようとした手を伸ばしかけた瞬間に冷ややかな声が聞こえた。それは紛れもなく金田さんが発した声で、その声は随分とさめていた。
「ダメだよ、君はおれの、」
「…………」
「彼女じゃないから」
金田さんは私が好きな人で、愛している人で、けれども金田さんは私の事は。私は。私という存在は。